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内なる惑星―ルネサンスの心理占星学

内なる惑星―ルネサンスの心理占星学

内なる惑星―ルネサンスの心理占星学

人気ランキング : 62223位
定価 : ¥ 2,940
販売元 : 青土社
発売日 : 2001-12
価格 : ¥ 2,940
納期 : 通常4〜6週間以内に発送
人間の魂とアストロロジー

現在の心理学は必ずしも正常に発展しているとは思えないところがあるように思います。精神の内というより、外に向かってしまったといえるかもしれません。
アストロロジーは本来、人間の精神のなかへの奥深い問いかけをするためにもちいられたものです。
もういちど、アストロロジーの真価を問い直す必要があるとおもいます。
この本が再度、こういった問題に対して問題を提起していると思います。必ずしも答えがあるわけではないですが、それは読者自らが自分で探求すべきことだと思います。
本書は実用本位なアストロロジーを求める人には向きませんが、精神的なことへの探求者には参考になるところがあると思います。

元型心理学と占星術

この本は、「ルネサンスの心理占星学」という副題の通り、フィチーノの理解を通じて、心理占星学について考察した書籍であるといえるでしょう。最後に訳者のあとがきもあるのですが、それによると、著者のムーア氏は、元型的心理学者の旗手の一人なのだそうです。心理占星学を志向する人の中には、ムーア氏に対し、占星術が臨床心理などの治療のツールとなるという、お墨付きをくれるのではないかという期待をもっていた人が少なからずいたのだそうです。しかし、ムーア氏は占星術を信じていないばかりか、占星術を心理学に近づけたり、逆に予言の術にするような方向には反対であると分かります。むしろ、占星術の中に息づいている「イマジネーション」を大事にし、還元主義的な科学となっている心理学を占星術に近づけたいと考えているのだそうです。ムーア氏にとって、イマジネーションというのは特別な意味を持っており、人間をその他の生き物とを区別する重要なものとなっているということです。
ジェイムズ・ヒルマン氏やムーア氏が属する元型的心理学は、「魂」を精神と肉体とをつなぐものとしています。個人的に非常に興味深かったのは、私たちが大切なものだと教えられている「自我」に対する認識が、かなり異なっていることでした。一般に心理学的に健康な人とは、自我や意思力が強く、苦しみや危険を回避する能力を持つ人だと見なされています。これに対し、この本では、「自我とは身体の延長であり、身体に関する空想に基づいて不必要に制限されたアイデンティティの感覚」であり、心理学的な態度に向い、そして魂の再生に向けての最初の作業は、そうした唯物的な関心や字義主義を溶解することにある、とされています。ここでいう自我の空想は、優越感や唯一無二であるという感覚を強めようとするのですが、こうしたナルシシズムは、自己愛や自己防衛的で自ら自分の可能性を制限する性質を持っているので、一般的に苦悩の原因ともなるのだそうです。また、自我は「きれい」で清潔なことを好むので、時間とエネルギーを人生をきれいにすること、即ち本当は避けられない混乱を避けたり隠そうとすること、に費やすのだそうです。具体的には、魂が怒りに向かっているときに自我がそれを認めないときに、抑制された感情が、強迫的な衝動、疾病、妄想、夢の中などに現れてくるのだそうです。
著者は、占星術に中にはイマジネーションが息づいているとしていますが、この本の後半では、フィチーノの占星術に基づいて、7天体の意味について、神話的イメージに依拠しながら、詳しい解説がなされていきます。個人的に関心があったのは、水星、土星、木星といった知性に関する天体でした。著者によると、現代は水星的な洞察にとっては不幸な時代なのだそうです。その理由は、現代は、終わりのない探索や神秘よりも、一面的で一義的な結論や事実が求められるからということです。また、土星に由来する鬱については、世間で一般化している躁的な活動主義の世界で死ぬ代わりに、内面に向かい、空想的な内省を働かせることにつながるとしています。木星については、創造的な知性を象徴し、文化を築き、活力を保つに必要な知性を提供する役割を担っていると指摘しています。
占星術に関する記述は、やや観念的で抽象的に思えるかもしれませんが、心理占星学の持つ意義について考えさせてくれる、興味深い本なのではないかと思います。

心理療法のルーツとしての占星術

 本書は大変ユニークな一冊である。純粋に心理学の本でもないし,占星術の本というわけでもない。心理療法のルーツはフロイトの精神分析だと思い込んでいる人には,本書の内容は驚くべきものであろう。しかし,人間に対する精神的な援助の歴史としては,臨床心理学の歴史は長く見積もってもせいぜい百数十年なのに比べ,宗教・魔術・シャーマニズムの方はいったいいつから始まったのわからないぐらい古い。それならば,いくら心理療法が科学的なものといえ,宗教・魔術・シャーマニズムの太古からの実践とその蓄積を,単に科学的でないという理由で黙殺するのは馬鹿げていると思う。迷信的な部分をうまく見分け,臨床的に妥当なところを採用していけばいい。筆者は心理臨床のプロフェッショナルでありながら,こういう部分を良くわかっている。ルネサンス時代の魔術的方法を現代的な形で甦らせようとしているのだ。
 本書は,ぜひ心理学を勉強している人,特に臨床にかかわろうと思っている人に勧めたい。心理学はもともと何を研究してきたのかがわかるだろうし,それが実験系の心理学のように統計的データに還元できるものについてではなく,ひとりひとりが体験するしかないようなものについての学問であることを理解することができると思う。もちろん,占星術に興味を持っている人にも読んで欲しい。占星術も人間に対する援助の方法の1つとして,心理学から学ぶことはたくさんあるのではないかと思うからである。本書を読んで,この流儀に興味を持たれた方は,ジェイムズ・ヒルマン著『魂の心理学』(青土社)読めば,より理解を深められるだろう。

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