ユングと占星術
専門用語が多いのが難点 |
ホーラリー占星術の知識を殆ど持たない私には、少々読むのが辛い内容でした。
シンクロニシティに関する著者の考察、ユングとフロイトの関わりを出生チャートを使って説明している点等は面白いとは思いましたが、如何せん専門用語が多く、読み辛さの為に面白さが半減した感があります。
心理学や占星術について、既に充分な知識を持っていらっしゃる方には薦められますが、そうで無い方にはお薦め出来ません。
占星術と心理学 |
心理学や精神分析学の専門用語が大量に出てきますので、決して読みやすい本だとは思いませんが、心理占星術が占星術に何をもたらし、何が限界とされ、今後どう発展させていくことができるのか、ということについて、考えさせてくれる本ではないかと思います。2〜4章までは、ユングの人生と占星術をはじめとするオカルト的なものとの関わりについて、ユングや彼を取り巻く人々のホロスコープを通じて解説されています。ユングが、フロイト的な精神分析学を受け継ぐ「皇太子」と見なされながら、オカルトに否定的なフロイトと徐々に離れ、独自の体系を作り上げていく様子が、鮮やかに説明されています。5章では、心理占星術の意義について、伝統的占星術と比較しながら語られています。次の6章では、ユングの観念を、著名な占星家がホロスコープの中でどのようなシンボルで捉えたか、という具体例が採り上げられます。ここから、7章のシンクロニシティ(意味のある偶然)について話題が発展し、続く8章で、占星術において、シンクロニシティがどのような形で表れるかについて見ていきます。9章、10章では、心理占星家がユングのシンクロニシティの観念に対し、どのように取り組んでいるかということを採り上げています。最終章の11章で、著者は占星術の意義を、錬金術と例えて問うています。そして、ユングが現代占星術に対して行った貢献を、今後どのように活用していくか、という問いかけをして結んでいます。
ミステリー小説より面白い |
占星術研究家たちがユング心理学のさまざまな象徴言語とスキーマを用いつつチャートの解釈を行ない、それを「心の地図」として表現することは決して珍しいことではない。本書の著者マギー ハイドはそれをさらに拡大 (木星) すると同時に、解釈の伝統的な方法 (土星) をもエギザルテーションへと導くという離れ業を成し遂げた。それは彼女の言う「シンクロニシティ2」、つまりクライアント (チャートの提供者) と占星術家 (チャートの解釈者) とが相互に参与し合い、また巻き込まれ合うという“秘密の共謀関係”に着目することによって、メルクリウス (水星、言葉の力) をパートナーに作業をすることである。メルクリウスはトリックスターであり、悪戯好きで主体と客体の関係を転倒させることなどお手のものだ。たが、その行為は決してとりとめのない戯れ、言葉の遊びではありえない。なぜなら、メルクリウスとは錬金術に関与するものだからだ。錬金術は“物質”の変成であり、私達に黄金をもたらす (かもしれない) プロセスなのだ。マギー ハイドによれば、この黄金とは「シンボルの力、人の心を何らかのかたちで動かす力そのもの」に見出されるものである。それは、日常のあらゆる瞬間に潜んでいる真に創造的ななにものかへの手掛かりであり、私達の人生をより生き生きとしたものにしてくれる筈だ。本書の中で展開される解釈を傍観しているはずの読者自身さえもが、いつしかシンクロニシティの一部になってしまうのだ。このような愉快な本を紹介してくれた鏡リュウジ氏に、心から感謝したい。